序章

4回転を二度きめた後が圧巻だった。

糸を妖しく紡ぐようなよく反る指先、くねらせる四肢に

天使と妖婦のそれを見た。

まだ男になりきっていない華奢な体躯

 

 

潤んだ瞳は

唯一人に

向けられていた。

 

俺は

 

欲情していた。

 

 

五輪最年少の金メダリスト

柾木 千春。

 

 

 

キス&クライで彼の頬に

嬉しそうにキスを浴びせる名コーチ北条氏。

満面の笑みでそれを受け止め、彼だけを見つめる少年。

 

しかし

栄光は、長くは続かなかった。

 

 

突如北条氏は彼の前から去って行った。

理由は不明である。

 

少年は、荒れ果てた。

 

誰もが

柾木 千春の名を口にしなくなった。

 

 

 

そして俺は数年後、彼との再会を

ロシアの地で果たす。

 

 

 彼のコーチ兼コリオグラファーとして。